今の主人と結婚したのは私は42歳のときでした。同じ市内に住んでいましたが、最初の出会いは高校生のときでした。
当時バブルの時期で、私も人よりも目立つことが大好き。文化祭になると聖子ちゃんを歌い上げ、人よりも目立ちたい、聖子ちゃんのようにぶりっこで、愛嬌を振りまいていました。
私は声はきれいなのですが、難点は顔が不細工なこと。よしもとでいうあきえのポジションで、歌は並みの歌手以上にうまいのですが、見た目がぶーなのです。目は一重で出目金のようにとびでており、色はしろく前歯が子供のとき怪我したことがきっかけで保険の差し歯。
笑うと他の歯とのバランスが悪く違和感がありました。なのでハリウッドスマイルにあこがれつつ笑うときは必ず手で顔を隠して笑っていました。
高校の時であった今の主人は、まさに白馬の王子様。頭もよくスポーツもでき彼女もいました。私もずっと片思い。性格は目立つのが好きなこともあってがんがん彼にアプローチしたのですが、当然笑ってお別ればかりでした。
3年間ずっと片思い。大学は主人が受かって進学した大学を私もあえて選びました。ほかにも偏差値の高い大学には受かっていたのですが主人と別れるのはいや。ずっと主人を片思いでいいから追いかけていきたいと思ったからです。学部も同じ。たまに主人から声をかけられたと思いきや、テスト対策のためにノートを貸してだとか、コピーさせてとかいいように使われただけでした。
でも私には主人に私の存在を知ってもらいたい。何かあったら頼りになる女性の1人に加えておいてもらいたい。日陰の身でもいいからずっとそばにおらせてもらうだけで、幸せでした。
顔は不細工ですが、根っからの明るい性格、友達が多かったので主人にいつも彼女がいたことは知っていました。私もそんな立場はつらいので彼氏を作ろうと思いましたが、主人以上に思える男性が現れませんでした。
主人は当時スキーのインストラクターのアルバイトをしていて、スキーブームもあいまって、女性にはもてもてでした。私も友達としてスキーや温泉旅行にサークル感覚で連れて行ってもらいましたが、それだけでもうれしかったのです。
大学時代私は唯一の自慢である美声を生かして、バンドのサークルに入りました。主人を日陰でおいつつ、振り向いてもらえない辛い思いを作曲し、自分で歌っていました。主人がライブに来てくれた時は本当にうれしかったです。いつも以上に私にスポットライトがあたり、それだけでもうれしかったです。キラキラしている自分を感じることができて本当にうれしかったです。
そうこうしているうちに就職しなければならなくなりました。私は美声を生かしてDJかナレーター、アナウンサーになりたかったのですが、すべて落ちました。なのでタレント事務所に所属することになりました。たまにオーディションを受け、声だけの仕事をしました。あとはアルバイトで生活を成り立たせていました。
対して主人はマスコミに入り、広告代理店に就職していました。当然おしゃれだし、給料もよく、私からは本当に遠い位置にいってしまいました。
もう学生の時のように主人を追うことはできなくなりました。私もタレント事務所に所属しオーデションは受けるのですが、受かるのは声の仕事ばかり。決して表にはでない日陰の仕事。思い切って整形も考えましたが、お金もなく細々と仕事をしていました。
3年目ですか、主人が5歳年下の女性と社内結婚、上海へ転勤することになりました。もう、主人とは会うことはできないし、一緒に取ったグループ写真でしか会うことができなくなりました。
結婚して数年後離婚したとの報告を、同窓会で知りました。わたしが42歳のときでした。どうやら理由は奥様の浮気。なかなか子供ができず、奥様も日本と上海との行ったり来たりにいやきがさし、会社の同僚と浮気。主人の先輩にあたり、それを知った主人は失望し、奥様が謝っても絶対離婚するしか選択がなかったそうです。
私はこれがラストチャンス、神様がくれた千載一遇のチャンスだと思い、思い切って主人に電話をしました。この時は日本の会社に戻っており、同じ関西圏に住んでいました。
私は昔から声だけは自信があり、弱った男性の心を癒すことができたのです。たわいもない話から、裏切りで失望している主人の気持ちを慰めました。声の威力は最大で、顔ではなく声で主人のハートをつかむことができたのです。
速攻で主人と再婚しました。お互い高校時代からの知り合いなので気心はしれているし、家も同じ市内なのでまあ近いです。共通の友人も多くグループデートを重ねるうちに、弱っている主人の心をわしづかみしました。
まさにトークと癒しです。私たちには子供はいません。再婚したけど、友達夫婦です。ずっと片思いしていた主人、初恋の主人と結婚できて私はとても幸せです。まさに粘り勝ち。弱った主人をタイミングよく手に入れることができました。
私は定職もなくお金もなかったのですが、主人はキャリアも重ね会社でも出生しました。主人の心をジャンピングキャッチし得意の美声で私のところに戻ってきてくれて本当に幸せです。